赤い流れ星
「シュウよ…急げ…!
時間がないぞ!」



どこからか急に聞こえてきた声に、ひかりはきょろきょろとあたりを見まわしたが、周りには誰もいなかった。



「今の…何?」

「賢者だよ。
……ひかり、今まで本当にどうもありがとう…」

シュウはひかりの体を抱き締めた。



「そんな……あっ!」



シュウの肩越しに、白くぼんやりと光る四角い物が現れ、それを見たひかりは思わず声をあげた。



「一緒にいられなくても、俺はずっとひかりのことを愛してるから……」

「私だってシュウのこと愛してる…!
私…シュウと離れるなんて出来ないよ!」

「俺を困らせないでくれ。
俺は……戻らなくちゃならないんだ!」

シュウはひかりの体を引き離し、きつい眼差しを向けた。



「だったら……だったら、私もシュウと一緒に行く!」

「ば、馬鹿なことを言うな!そんなこと出来るわけないだろ!
ひかりがいなくなったら、ひかりの家族がどれほど心配することか…」

「そうだよね……
だけどね…私、もう止められないの。
自分の気持ちに嘘吐けない。
どんなに自分勝手でも、どんなに間違ってても、私、シュウと離れられないよ!」

「ひ、ひかり!」

ひかりはシュウの手を取り、躊躇う事なく異世界への門へ飛びこんだ。



(さようなら、兄さん、父さん、母さん……
私は、シュウの本来の世界で、シュウと一緒に暮らします。
勝手なことをして本当にごめんなさい。
私はシュウと幸せになります。)



二人が門をくぐるのと同時に、門は空気の中に紛れるようにその姿をかき消した。

ひかりはシュウの世界へ旅立った。
二人はこれからも新しい世界で幸せに暮らすことだろう。



~fin



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