赤い流れ星
部屋に入り、ふすまを閉めた途端、私の瞳からはぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。
声が下に聞こえないように、無理矢理押し殺し、久し振りにむちゃくちゃ泣いた。
泣いて、泣いて、顔はつっぱり目は痛く、息も苦しくなる程泣いたけど、それでも少しも気分は晴れず……
その代わりに泣いたカロリーが消費されてしまったのか、私のおなかがぐーと鳴いた。
こんな時に…なんてデリカシーのない腹の虫なんだ!
私はこんなに悲しくて……第一、おなかなんて減ってないのに…!
そう考えた途端に、まるで反論するかのようにまたおなかの虫が鳴いた。



(馬鹿…食欲なんてないよ…)

私は、涙を拭い鼻をかんだ。
コーラは生ぬるくなってたけど、台所に降りていくのがいやで我慢して飲んだ。
飲み物だけっていうのもなんだから、ちょっとだけ食べるかとすでに封の開いていたポテチに手を伸ばし……音がないのは寂しいと、ゲーム機のスイッチを入れた。
そうだった!
私はボス戦に備えてレベルアップを頑張ってた所だったんだ。
あと少しでレベルはあがる…
それを思い出した私は、急にゲームモードに切り替わり、仮想世界にのめりこんでいった。
食べかけのポテチはすぐになくなり、新しい方の封を切る。
ポテチとお菓子をつまみながら生ぬるいコーラを飲み、私は雑魚キャラを倒し続け、ついにレベルアップした。
その間に稼いだお金で武器も買った。
よし、これで今度こそ倒せる筈!



「やったーーー!」



思わず出してしまった大声に、あわてて口を閉ざし耳を澄ませる。
幸い、下からは特に物音は聞こえない。
ほっと胸を撫で下ろし、私は画面を見てにんまりと微笑んだ。
これで、また新しい大陸へ進める。
あのボスには思った以上に苦しめられたから、喜びも一入だった。
伸ばした指の先にはなにも掴めず、見てみるとあたりに置いてあったお菓子はいつの間にか全部食べ尽くしていた。
まだ食べたりないっていえば食べたりないけど…さすがに今夜はもうやめておこう。
満足したせいか、私は急に眠くなり、のそのそと万年床まではい歩き、そのままごろんと横になった…
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