赤い流れ星




「ひかりーーー!」



「え?何?何?何?」

私は突然誰かの大声によって叩き起こされ、完全に寝惚けたままで目を開ける。
今まで確か何か楽しい夢を見ていた筈なのに、それも一瞬ですべて消え去った。



「……ったく…
なんだ、この部屋…ゴミくらいゴミ箱に捨てろよ…!
しかも、テレビも電気もつけっぱなし…部屋着と寝巻きは同じなのか?
あぁぁ…一体、何時までゲームやってたんだ。
酷い顔してんなぁ…」

朝っぱらからこんなことをガミガミ言うのは……



「シュ…シュウ!
なんで、ここに…!?」

「なんでって、さっきから何度呼んでも降りて来なかったから心配して見に来たんだろ!」

「あ…ごめん…
………ん?」

反射的に頭を下げた数秒後…私は大きな悲鳴を上げた。



「な、なんなんだよ、突然!」

「で…出てって!
ここには入らないでって言ったでしょ!」

「こんなじゃ誰にも見せられないよなぁ…
今日は、この部屋の掃除だ!
さ、降りるぞ!」

私は、有無を言わさずシュウに背中を押され、部屋から追い出された。
酷いよ…部屋には絶対に来ないでって言っといたのに…

悔しさと酷い状態の部屋を見られた恥ずかしさで、私はまた泣きそうになっていた。
昨日の涙のせいか、まだ顔が突っ張ったような感じがして、瞼がすごく重かった。
そのことをゲームのし過ぎと思われたのは、まだ良かったといえば良かったのだけど…

渋々顔を洗い、台所に行くと、そこには温かな湯気を立てる朝食が用意されていた。
昨夜遅くにあんなにお菓子を食べたのに、その光景とにおいに私のおなかはまた反応する。



「お、お待たせ!」

腹の虫が鳴いたのを気付かれないように、私は一際大きな声を上げた。
それはうまく誤魔化せたようで、シュウは特になにも言わなかった。
朝食はやっぱりとてもおいしくて…



「あれ?お漬物なんてあったっけ?」

「あぁ…それ…
昨夜、漬けといたんだ。
けっこううまいだろ?」

なんと、この人、浅漬けまで作ってしまうんですか。
どこまで料理出来るんですか!?



……っていうか、昨夜のあの気まずい出来事は、なかったことにするつもり…?
それとも、シュウにとっては気にもならない程、どうでも良いことだったのかな?
私はどうなんだろう?
昨夜、あんなに傷付いた筈なのに、いつも通りにゲームしてお菓子食べてぐっすり寝て…
そんなんで良いの?それに……そうだ!二階に上って来たら出て行ってもらうって言ったんだ…!
なのに、シュウはそんなことお構いなしに上って来て…
あ……あぁ、だけど、それは私がなかなか起きなかったから心配したって言ってたし…そのことに嘘はない筈。
だって、理由はわからなくても、シュウが私のことを好きなのは紛れもない事実なんだもの。
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