赤い流れ星
あぁ、それにしても本当に苛々するな!
なんでこう想像力がないんだろ…
……いや、違う。
きっと、私は誰にもシュウを渡したくないんだ。
……ヤ、ヤバイ!
私、やっぱり心を病んでる?
そんなことを真剣に考えてしまうなんて…



「あぁぁぁ……」

私は脱力した声をあげ、携帯電話を投げ出した。

今までの経験上、こんな時はどんなに考えても良い案が出ないことはわかってる。
そんな時にはもう考えるのをやめて、何か、気分転換をするに限る。



(そうだ…!)

こういう時は、畑だ。
植物と戯れるのは意外と気分転換になる。
おばあちゃんが一人で細々と耕していた畑だから、そう広くはない。
とはいえ、これを老人が毎日手入れをするのは、相当大変だっただろうってことは私にもわかる。
私は、実ったものを取ったり、たまに虫を取ることしかやってない。
しばらく放置されてた畑を耕して、苗を植えてくれたのは父さんだから、今の野菜達が終わったら、その後、どうすれば良いのかはわからない。
でも、頼めば、父さん達はきっとすぐに来てくれることもわかってるから、たいして心配もしてなくて…そんな自分の甘い考えがたまにいやになってしまう。
普段は会いに来ないでって言ってる癖に、困った時には頼ることを考えてる。



(ズルイよなぁ…)

軽い自己嫌悪に陥りながら、畑の中をぶらぶらして、きゅうりとトマトをいくつかもいだ。
嫌いななすは、手をつけないでいるからしなびれてる…
それを見る度に、なんとなく、罪悪感に似たものを感じてしまうから、なすの植わってるあたりは出来るだけ見ないようにして……



それにしても、赤く染まった夕焼け空を見ると、なんだかほっとする。
夕陽は寂しい気持ちになるって人もいるけど、私は寂しさにはけっこう強い方なのか、あのオレンジ色には「温かさ」しか感じない。
このあたりには邪魔になるような高い建物もほとんどないから、空全体がオレンジに染まって、一瞬、別世界にいるようにも感じられる。
自然って良いよね。
空もとても澄んでいて、街灯も少ないせいか、星の美しさったら感動ものだよ。



(あ……そういえば、今夜だったかな!?)



私が思い出したのは、確か、今夜見られるって言うなんとか流星群ってやつのこと。
なんだか舌を噛みそうなややこしい名前の星だった。
今までにもこんなニュースを聞く度に、いつも見てみたいと思ってたけど、私の実家からは一度も見られた試しがなかった。
空が曇ってるせいなのか、建物が密集してて私の部屋からは空の一部しか見えないせいか、それとも、ただ単に運が悪いのか…
でも、ここなら見られるかもしれない…!



(えっと、確か北東だから……こっちかな?)

私は、空を見上げ、早々と今夜の天体ショーに思いを馳せた。
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