赤い流れ星
それはなんとも後味の悪い雰囲気で……
好きという感情を持ってもらえるのは嬉しいけど、それは言ってみれば魔法のようなもの。
シュウは一方的に「好き」という感情を植え付けられただけのことで、本当の私を好きになってもらえたわけじゃない。
きっと、頭の良いシュウのことだから、彼もそのことは気付いてると思う。
だけど、私のことを好きな感情はどうにもならなくて……



(そっか…
私なんかより、やっぱりシュウの方がずっと辛いんだ…)



そんなことに気付いてしまうと、私は深い罪悪感のようなものを感じた。




「シュウ、あのね…」
「ちょっとお願いがあるんだけど…」

またも私達は同時に声を出した。
意外と気が合う!?



「何?」

「あ…あぁ…俺、服、着替えたいんだけど…何か着るものあるかな?」

「えっ?服?」



そうだ。
シュウは突然こっちに呼び出されてしまったわけで、もちろん何も持って来てないからいろんなものがいるんだ…
あ、下着もいるかも…



「ちょっと待ってて…」

私は部屋に戻り、財布を取り出す。



(……うわぁ…たったこれだけ…)

それは、せいぜい安物の下着が少し買える程度…
服なんてとても無理……




そっか…
これからはこういうことも全部私がなんとかしていかなきゃならないんだ。
だって、シュウは元々この世界の人間じゃないから戸籍もないし、だから就職も出来ない…
……そうだ!記憶喪失ってことで、戸籍を作ってもらうことなんて出来ないのかな?
いや、そんなことになったらきっとテレビとかが取材に来て大事になってしまう。
テレビで呼びかけたって、シュウを知ってる人なんているはずもないんだし、そんなことになったら、不審人物としてマークされるかもしれない。
下手すれば捕まる!?
そこまではないとしても、少なくとも自由は拘束されるかもしれないよね…

そんなことを考えながら、私には、シュウを守る責任があるんだと実感した。
でも、バイトさえしたことのない私に、そんなことが出来るんだろうかって不安も大きい。
しばらくは仕送りでなんとかするにしても、いつかシュウを父さん達に紹介することは出来るだろうか?
……籍もない正体不明の男を父さん達が認めてくれるわけなんてない。
それに、もしもこうしてしばらく一緒に住んでるうちに、私がシュウのことを嫌いになったらどうなるんだろう?
他に好きな人が出来たら…
私がシュウを見捨てたら、シュウはきっと生きていけない。
そんな無責任なことは出来ないけど思う気持ちの裏側で、それは私のとても大きな心の負担に感じられ、あらためて大変なことをしてしまったと痛感した。

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