赤い流れ星




「はぁぁ……」

私はまだ辿りつけない郵便局のことを考え、大きな溜め息を吐いた。
今までだったら歩いて2~3分の所にコンビニがあった。
だから、こんなに歩く必要なんてなくて……
こっちに来た当時は、とにかく不便なことに驚いた。
何をするにも遠くまで出掛けないといけないんだもの。
だから、実家では乗らなかった自転車を買ってもらったわけで……



そんなことを考えてると、バス停のベンチの横に停まってる私の自転車を発見。
あ、これで郵便局まで行って帰れば……
そう思ったけど、よく考えると鍵がない。
それに、そんなことしたら、シュウがバス停から歩いて帰る羽目になる。

……ん?
私って、普段、こんなに他人のことを考えるタイプだったっけ?
……違う…いつも、自分のことが一番だった。
いつだって自分が楽なように動いてた筈……
でも、たった一日で人の性格なんて変わるもんだろうか?

私はもやもやした気持ちを抱えながら、自転車を諦めて…ただ、ひたすらに郵便局を目指した。







「あぁ…疲れた。」

きっと、明日は筋肉痛だ。
結局、往復で一時間以上かかった。
私が歩くの遅いせいかもしれないけど……
おばあちゃんは高齢になってからもこんな遠い道程を歩いてたんだなぁと思うと、その大変さが身に染みる想いだった。



(あ…そうだ…)

私は、コーラを一杯飲むと、部屋へ向かった。
シュウは、今日は私の部屋を掃除する気満々だったから、きっと帰って来てからもチェックする…いや、掃除するって言い出す筈だ。
また怒られる前に少し片付けて……あ、シュウに貸してあげるジャージも探しとかないと。
部屋のどこかに紛れこんでる筈だから。



(あ~あ……)




確かに酷い…どこに何があるのか全くわからない。
散らかってるっていう自覚は、当然あった。
でも、ここには誰も来ないし、誰も何も言わないからそのままにしてた。
自分でもなんとかしたい気持ちはあったんだけど、どうもやる気が出ないっていうか…このままでも特に困ったことがなかったせいか、ま、いっかって気持ちになってた。
でも、今は違う。
このままにしてたら、シュウに怒られる。
怒られるからなんとかするなんて動機は子供みたいでおかしいかもしれないけど…でも…きっとこれは片付けるための良いきっかけなんだ。
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