赤い流れ星




「フフフフフ……」

私は、薄気味の悪い笑い声を上げてることに少しも気が付いていなかった。



簡単な夕飯を済ませた後、私は急に思い立って新連載の打ち込みを始めていた。
相手役を思いついたわけじゃない。
自分そっくりなキャラを相手役にしてみたわけ。
さえない女の子が、かっこいい男の子と恋に落ちるってストーリーはけっこうよくある。
それにそういうストーリーはそれなりに人気もある。
でも、私はそういうのが嫌いだった。
だって、現実にそんなことがある?
ない、ない!絶対にありえない!
いくら想像の世界だっていっても、そんな現実味のないストーリーなんて許せないし、第一、読んでて哀しくなって来る。
だから、私はそういうのは書いたことがなかった。
でも…ちょっとしたノリで書いてみたら、なんだか自分でも考えてなかった程、幸せな気分に浸れたんだ。
病気だ…こんな恥ずかしいこと書いて喜んでるなんて、私はやっぱり病気なんだ……
そうは思うものの、楽しくて妄想は止まらない!

出会いのシーンはまだ浮かんで来なかったから、とにかくシュウにひかりが好きだと告白されて面食らう所から書いてみた。
ちなみに、「ひかり」っていうのは私のペンネーム。
本当はもっと今風のキラキラした名前にしたかったんだけど、気がひけて、本名よりはちょっとかっこいい「ひかり」にしてみた。



ひかりは、18歳。
高3の終わりから引きこもりになったというのは、あまりにも現実そのものだから高2から引きこもりということにしたけど、後はそのほとんどが私そのもの。
星座や体型、趣味等は、皆、私のデータを使った。
ひかりは、自分の理想にぴったりながら、自分とは釣り合わない程素敵なシュウに、騙されてるんじゃないかとかいろいろ考えて、なんとかシュウから離れようとするんだけど、シュウを知れば知る程、ひかりはシュウのことが好きになって…
と、そんなラブストーリーにするつもり。
もちろん、最後はハッピーエンド!



ただ、問題はどういう出会いにするか…
最初のシーンで、読んでもらえるかどうかが決まるとも言えるから、なにかインパクトのある出会いを考えないと……
そんなことを考えながら、私はいつものように夕食後の睡魔に襲われていた。
少し眠ったら、ちょうど流星群の時間に目が覚めるかもしれない。
私は携帯を握り締めたまま、とても幸せな気分で眠りに就いた。
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