赤い流れ星




「んん……」

私は明るい光りに開けかけた目を再び閉じる。



そこは、自分の部屋で……私は窓の近くでごろんと横になっていた。
その時、不意に昨夜の赤い隕石のことを思い出した。



(そっか…あれは夢だったんだ…
私は、きっと二度寝してしまったんだね。)



そう思うと、昨夜の出来事がようやく納得出来た。
流れ星を見ようって考えたまま寝てしまって、それであんなおかしな夢を見たんだと気付き、私はほっとしたと同時に馬鹿馬鹿しくて笑いが込みあげて来るのを感じた。
流星群を見逃したのは残念だけど、今更、そんなことを言っても仕方がない。
きっと、いつかまたこんな機会があるだろうから、その時を待つしかない。
誰にもはばからず大きな口を開けてあくびをした時、私はふとあることに気が付いた。

私は、珍しく素早い動きで起きあがって階段を降り、まっすぐに台所へ向かった。
台所から、懐かしい味噌汁のにおいが漂っていたからだ。
最近の私はお湯を注ぐだけのインスタントの味噌汁をたまに作るだけ。
それもけっこうおいしいけれど、やっぱり手作りのお味噌汁は、雰囲気が全然違うよね。
来る時は必ず連絡して、私の承諾を得てからにしてって言ってあるんだけど、ひさしぶりのこのにおいを嗅ぐとそんなきついことは言えそうにない。
それにしてもえらく早くに来たもんだ。
一体、何時に家を出たんだろう?



「母さん、来てるの?」

玉のれんをくぐり、私は声をかけた。



「……遅い!
今、何時だと思ってるんだ?」

「えっ!?」



「もう8時半過ぎてるぞ!
顔もまだ洗ってないんだろ!
早く洗って来い!」



おたまを持って目を吊り上げているその人は、昭和な台所には不似合いな長身のイケメン。
私の着てるよれよれのジャージとは比べ物にならないようなかっこいい黒地の長袖ROCKーTを着て、すらりと伸びた長い足にはサテンのパンツをはいている。
……いない、いない。
この近所にこんな格好をしてる人なんて、絶対にいない。



「おまえ、まだ寝ぼけてるのか?
俺の言ったことがわからないのか?」

「あ…あ…あ…あの……
も、も、もしかして……」

「なんだ?おまえは裸の大将か?」

「そ、そ、そうではなくて……」

私は完全にパニックに陥っていた。
心臓が飛び出しそうになって、足はがくがくするし、聞きたいことがなかなか言葉にならない。



「だから、何だ?」

だって、怖い顔してそう言ったのは、私のオリキャラ「神咲愁斗」その人だったのだから…!

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