赤い流れ星
「兄さん!も、もしも、この人が奥さんを生きかえらせてくれるように願い、その願いが叶えられたとして、どうしてこの人は自殺なんかしたの!?
せっかく生き返ったのに、なぜそんなことを…」

「……これは俺の推測だが…
多分、生き返ったのは死ぬ前の奥さん……
つまりは、ガンに冒され、あと少ししか生きられない奥さんだったんじゃないだろうか?
だとしたら…その男はすぐにまた奥さんを見送らないといけないことになる。
だから、二人で……」

「そんな……」

そうか……ただ生き返らせるだけじゃだめだったんだ……
でも、それってあまりにも残酷だ。
それじゃあ、何のために生き返らせたのかわからない。
せっかく生き返ったのにまたすぐに死んでしまうなんて……私はその人のことを考えると、胸が痛くなった。



「……この事件は、まだ何も解明されていない。
現時点では、男性が失踪したというだけの話だ。
仮に心中をしていたとしても、すでに死んでる者が旅館へ来る筈もなければ、また死ぬはずもない。
だから、警察ではこの男が亡き奥さんに似た女性と旅行をし、そしてなんらかの理由で心中を図ったと考えてるんじゃないだろうか。」

そうだろうな。
現実的な方面から考えればそうとしか考えられない。
好きなタイプっていうのは、似た感じになることも多いから、たとえば奥さんを亡くした寂しさから奥さんに似たタイプの人と付き合い始めて旅行に行って、そして、なんらかの理由で死んだってことはあると思う。
ただ、問題はそこに関わる様々な不思議なこと。
特に、あの流星群と関わってる雰囲気が気にはなる。



「……ちょっとこの事件について調べて来ようと思う。」

「えっ!?
な、なんで?」

兄さんの突飛な言葉に、私はびっくりして兄さんをみつめた。
だって、警察も解明出来ないことを素人の兄さんが調べて何かわかるとでもいうのだろうか?
それ以前に、兄さんはなぜそんなことをしたがるのか私にはわからなかった。



「それは……
本当に、カリスタリュギュウス流星群の奇蹟が起こったかどうかを確かめるためだ。
もしも、これが本当のことだったら……」

兄さんはそう言うと、シュウの顔をじっとみつめた。
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