赤い流れ星




「なんだかおかしなことになっちゃったね…」

「そうだな…
でも、俺、良かったと思ってる。
普通だったら、頭から否定されることを、和彦さんは前向きに信じようとしてくれてるんだから……」

「……前向きねぇ。」

兄さんがお風呂に入ってる隙に、私はシュウの旅行準備を手伝いながら明日からのことについて話していた。



「それから、これ…持ってって。」

「何、これ?」

「お金。」

「金なら和彦さんが……」

「信用しないわけじゃないけど…もしもってこともあるから、兄さんがおかしなことをしようとしたら逃げて来て。
そうじゃなくても、万一兄さんとはぐれた時とか、お金がいることあるかもしれないじゃない?
あと、お財布携帯も使えるから、それも覚えといてね。」

兄さんのことを信じてないわけではなかったんだけど、万一ってことはどんな時にもあることだから。
シュウを警察にでも突き出そうとするとか、妹をたぶらかしたとかいって訴えるとか、何かあった時に無一文じゃ逃げることも出来ないから、私はもっていたお金をほとんど全部手渡した。



「俺がいない間、弁当は作れないから昼飯代がいるだろう?
そういうのはちゃんとあるのか?」

「大丈夫だって。
その分はちゃんと取ってあるから。」

「……夜食べるものとか大丈夫か?」

「そんなの全然大丈夫だよ。」

「遅くなる時はタクシーで帰るんだぞ。
それから戸締りは……」

「大丈夫だってば!
私、シュウが来るまでは全部一人でやってたんだから。
シュウは意外と心配性だね。」

そう言って笑って見せたけど、本当は妙に心細かった。
今まで一人でも寂しいなんて思ったことなかった筈なのに、シュウが数日いなくなると思っただけでとても寂しい気持ちがした。

兄さんがお風呂から上がってから、メアドや携帯の番号の交換をして、そして、くれぐれもシュウにはおかしなことをしないでと頼みこんで、私は部屋に戻った。
明日の朝は三人で同じバスに乗ることになった。
だけど、帰りは私一人だ。
それを考えると泣きそうになってくるから、あまりそのことは考えないようにして、私は無理矢理眠りに就いた。
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