君さえいれば
「今日は静かだな、いつもなら美味しいとか言うのにさ」




「あ、あんまりにも美味しくて言葉が出なかったの。あっ、遠野のそれ、美味しそう。ちょうだい」




「バカ、それ、俺が最後に食べようとして置いてたんだぞ」




「イエーイ。早いもん勝ちだよん。はい、あたしの蒲鉾あげるから許してよ」




「てめぇ、蒲鉾じゃ許さねえぞ。覚えてろよ」




電車の中はやっぱり楽しくて遠野といる空間が満たされていてずっとずっと遠野といられたらいいのにな。なんてあの頃のあたしは思っていた。
< 16 / 104 >

この作品をシェア

pagetop