君さえいれば
「・・・遠間、ちょっと離して」




あっ、力強く握りすぎたかな。我に返ってゴメンと言って距離を取った。すると今度は優しく両手を掴まれる。


そして片手を離してあたしの頭をゆっくり撫でてくれた。




「あれじゃ、頭を撫でることもできねえだろ。今日はバイト休んでろ。俺がお前の分も仕事してやる。だからお前はブチのためにいっぱい泣いてやれ」




その優しさが嬉しくて、遠野の言葉に涙が止まらなかった。おじさんとおばさんに泣いているあたしの代わりに説明してくれた遠野。




おじさんもおばさんもゆっくり休んでていいよ、帰らなくて大丈夫?とまで言ってくれた。


でも、バイト途中で放り出すなんてきっとブチも許してはくれないだろうし、望んでない。


だから遠野の言葉通り今日だけは一日中、ブチのためだけに泣いて泣いて、明日から残りのバイトを頑張る、そう決めたんだ。
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