秘密戦隊とホームレス宇宙人
「じゃ、じゃあ、小話してみるよ」


「…ウン」


「あの~、俺の友達が北海道から沖縄までパチンコをしながら旅を……」

俺が唯一持っているすべらない話を始めたんだが、桃子さんはそっぽを向いていて、聞いてないようだった。


「って聞いてねーのかよ!」


「あ、ゴメン。考え事してた」


「姉さん自由だねぇ」


「前にもね、お酒が美味しくなかった時があったの。夜の仕事中でね…ハカセがあたしの働いてる店に来てたとき…」

「ここに一緒に住む前の話?」

「ウン…」


「聞かせてよ?」

俺のつまらない話より、その話に俺はすごく興味があった。


「あたしがキャバで売れてなかった時代に、よく来てくれてる客がいたの。小太りで、お金はそんなにないみたいで、ボトルは入れてくれないけど、指名はしてくれてたの。その客に腰痛がひどいっていう話をよくしてたのよ。今思えば、そんな所帯じみた話ばっかりしてたから、売れなかったのかもしれないけど。

そうしたら、ある時、プレゼントをくれたの。

中を開けたら、ピンクの…骨盤ベルトだったわ」


「ガウベルトですね?」


「そう。で、アットホームなノリの店だったから、可愛いでしょって言って付けてそのまま仕事してたの。そうしたら、すぐに売り上げが伸びたの」


「まるで、雑誌の広告にある幸運を呼ぶブレスレットみたいだ…」


「…だから次の日からも、お守りとしてドレスの下に付けて仕事してたの。でも、売り上げは伸びても、違うものを失った……」


桃子さんは悲しそうな顔でグラスを見つめながら、過去の話を始めた。
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