秘密戦隊とホームレス宇宙人

「なにも…起こるわけないでしょ」

と、笑った桃子だったが、ハカセの様子がどこか違った。



「シャンパンくれ」

ハカセは感情がなくなったかのように、機械的にそう言って、ボーイにシャンパンを注文したのだった。

心配そうに桃子はハカセに尋ねた。


「え…ちょっと、お金ないんでしょ？無理しなくていいですよ」



「ああ。ない…ぎりぎり頼めるものを注文した」


「なんで…？そこまでして信じさせたいの？」


「いや、体が勝手に動いたんだ。やっぱり、お金を使わずにはいられなくなる」


「そんな……あなたのさじ加減じゃなくて？」


「信じられないなら、信じてもらえるまで、通うだけだ」

そう言ったハカセの目は真剣だった。

注文したシャンパンで乾杯し、いつの間にかハカセは酔っていた。


「今日は、酔うの早いですね。いつもは強いのに…」

桃子にそう言われ、ハカセは顔を赤くしながら答える。


「うむ…。…ベルトが一本見つかって、ちょっとだけ希望の光が見えたからかなぁ」


無邪気に微笑むハカセを見て、それを信じてあげれない桃子は複雑な気持ちだった。


しばらくして、新しく入ってきた客に、桃子は気付いた。


「…あ、今日来てくれるって言ってたお客さんが来ちゃった。こんな時間になって…」


「おめでとう」

と言って、ハカセはシャンパンを一気に飲み干した。


「ベルトを巻いてないのに来たってことは、本物だ。キミ自身に魅せられたお客さんだよ。キミを必要としてる、本物のお客さんだ。大事にしてあげたほうがいい」

ハカセは笑顔でそう言った。


やがてボーイが、ハカセの席にヘルプを着ける。