秘密戦隊とホームレス宇宙人
第14話
今日も俺は血の滲むような特訓をしていた。
といっても、頭で念じることでモノを引っ張る訓練だから、筋肉は使わないんだが、体力は相当使う。
ハカセが用意した100キロの岩をゆっくり動かして、自分の嵌めているベルトにくっつけることもできるようになった。
「うむ…。岩を動かすのも順調だな。次は、外に来てもらう」
「ハァ…ハァ…次は何ですか?」
ハカセに連れてこられた場所は、運送会社の前だった。
「まさか…」
俺の嫌な予感は的中する。
「そうだ。トラックを動かしてみろ」
「無理無理無理無理!ムリですよ。サイドブレーキ引いてるかもしれないし」
「やってみなきゃわからんだろ。1メートル動かしたら昼飯にする」
「え~。てか、勝手に動かしていいんですか?」
「いいんだ。我々は正義の味方だぞ!」
そんな返しに納得した訳ではないが、俺はトラックの正面から約1メートル離れて立ち、念じた。
(トラックよ!動け!)
俺は思いっきり念じた。しかし、これは無理だと思った。
「はぁ…ハカセ…もぉ、ムリです。力が……」
俺が倒れこむと、ハカセは罵声を浴びせる。
「情けない!そんなんで宇宙を救えると思ってるのか?気合が足りん!」
「…俺だって頑張ってますよ。やれるだけやってますよ!どれだけきついかわかって言ってるんですか?」
俺は今までハカセに反抗したことはなかったが、日々のきつい修行に追われ、つい言ってしまった。
「わからんよ!正直わからん!でもな…」
「わかんないで物を言うから!…だから…鈴木もどっか行っちゃうんですよ」
「行きたきゃお前も行けばいい!どこにでも行け!ベルトは置いていけ。他を探さなきゃならんからな」
ハカセとの言い合いの最中に、脳に何かの信号が走るのがわかった。
「……行かなきゃ」