秘密戦隊とホームレス宇宙人
家では母親の陽子と二人きりになった。

せんべいを食べながら二人でワイドショーを見る。

「今日は早いのね」
と、お袋は言った。

いつもは昼過ぎに起きるからだ。

「まぁ…出かける用事があるから」


もう2年もフリーターを続けているからか、
「職案に行くんでしょ?あんたも早く就職しなさいよ」
という母のお決まりの台詞は、最近ではあまり聞かなくなった。

うざくなくなった反面、見棄てられたのではないかと、不安になったりもする。

俺はコーヒーを飲んでゆっくりした後、支度をした。


何度も着替えては姉の部屋の姿見を見に行き、ああでもないこうでもないと着替えた後、口臭を抑えるタブレットをポケットに入れ、ワックスで髪をセットした。

―完璧だ。

俺の中の性的な欲望はコンドームという物体に変え、財布の中にしまい、清楚な気持ちでデートに臨む。

財布に入れておくと傷むから、真似はしないように。
ケースに入れて持ち歩くべきだ。
俺は使用機会に恵まれないから、これでいい気がする。

「いってきまーす!」

お袋は俺の格好を見てこう言った。

「あんた…張り切り過ぎじゃない?デートでもする訳じゃあるまいし」

白のジャケットはやり過ぎか?

「…別にいいじゃん。いってきます」


「…気をつけてね」


これはデートだ。

誰がなんと言おうと俺の中では久しぶりのデート。

ベルトを返してもらうだけじゃない。

彼女だって、ベルトを返すだけなら家には呼ばないはずだ。

もしかしたら、ベルトの違う使い方とかを色々と教えてくれるんじゃ……。

手取り…足取り。


昨日のコンビニへと向かう俺の足取りは軽い。

駅前通りまで歩き、気付くと横にはベルトを買わされたビルがあった。

嫌な思い出しかないが、彼女と逢わせてくれたのは、あのオッサンから買ったベルトおかげか…。

そんな事を考えつつさらに歩くと、レンタルショップの「GERO」があった。

昨日の思い出があるから、ちょっと来辛くなってしまったな。
でも出逢わせてくれたのも、ここのおかげ。

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