秘密戦隊とホームレス宇宙人
「―いらっしゃいませー」

俺が店内に入ると、目の前に内藤ちゃんがブラシを持って立っていた。


「なんだ。コータ先輩かぁ」

「なんだとはなんだよ」

“いらっしゃいませ”を言って損したってか?


「いらっしゃいませ言って損した」

…どんぴしゃりだった。

笑ってそう言った内藤に、
興味はない。

「あっそ」


俺は奥のレジにいる、美沙ちゃんに絡みたいのだ。

チラ見するが…やっぱり今日も可愛い。


「今日忙しかった?」
と、不本意にも内藤に声をかけてしまうのも、俺という男の性。


「別にー。普通ですよ」

「そっか」

やはり、コイツは話しかけやすいな。
こんな感じで美沙ちゃんにも話しかけたらいいんだ。―よし。

俺はいつものように、出勤前のコーヒーを買いにレジに向かった。


「お、おはよう」

「おはようございます」

近付いても可愛いな…。肌がツルツルだ。高3だから、18歳…俺の4コ下だ。

「髪…いつもと違くない?」

「あ。わかりますー?」


「わかるよー。前と感じがちょっと違う」

俺は美沙ちゃんをいつも見てるから、わかるさ…。


「前髪ちょっと切って作ったんですよー」


「…すごくいいと思う」


「ありがとうございます」

―ピッ
彼女がレジを打つ。


「………あ、あと」

俺は奥に陳列されているタバコを見た。

「いつものやつですね?」


「…あ、うん」

彼女は俺の吸っているタバコを取ってくれた。
銘柄覚えててくれたんだ…。

嬉しくて堪らない。

レジのこのカウンターがなかったら、ぎゅっと彼女を抱きしめたいところ……だが、それは出来ない。


「吸いすぎは良くないですよ」

「…うん。そうだよねー」

美沙ちゃんがそう言うなら辞めようかな。
なんとなく吸ってるだけだし。

ちょっと喋れただけでも嬉しかった。

―思わず笑みがこぼれるような気持ちのまま休憩室で一服をしていると、同じバイトの磯貝がやって来た。
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