秘密戦隊とホームレス宇宙人
「い、いや…」

「一回買っちゃえば一生モノですからね!安いでしょう。さ、これが書類ですねー。ここに印鑑…あ、拇印でいいですよ」


「いや、いらないっす」
俺は勇気を振り絞って言った。


「じゃあ、分割コース…月3千円にしときますか?ガス料金と同じぐらいのがいいかなぁ?負担にならないし」


「いや、そういうんじゃなくていらないっす」

3千円づつ払ったらいつ返し終わるんだよ…。13年…いや、利息がつくから、もっともっと延びるだろう。


「…もう、お兄さんには特別だよ!これナイショね!…仕入れ値と同じで儲けがなくなっちゃうんだけど、さらに半額の24万でいいよ!」


「え?」

一瞬安いと思ってしまった自分がいた。96万円から考えれば大分安い。もっとも、96万の価値があるものだったらの話だが。


「じゃあ、オッケーね!持ってけドロボー!」

俺の人差し指を押さえて、勝手に指を朱肉に付けようとする。完全に悪のやることだ。

「い…いや、いらない…っす!」
俺も必死で抵抗する。

手を振り払うと、オッサンの目つきが変わっていた。ニコニコしていたオッサンはもうそこにはいなかった。

「…もう、しょうがねぇなぁ。12万でいいよ」

オッサンの態度が急変した。タバコに火を点けている。


「い…いらないっす」


段々否定するのが平気になってきた。よし、もうここを出よう。
帰るのが一番手っ取り早い。
と、俺が立ち上がると、オッサンも立ち上がって俺を止める。
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