秘密戦隊とホームレス宇宙人
「―金を出せ!!」

黒のフルフェイスのヘルメットをかぶった男は、そう叫びながら包丁を突き出して近づいてくる。


「早く出せ!ありったけ出せ!」


俺は突然のことに体が固まってしまった。

「早くしろぉぉ!」

「は、はい」

まさか強盗が来るなんて。テレビの中だけだと思っていた。

俺はレジを開けて、札を取った。

しまった…。そんなにお金が入っていない。

さっき、数万円抜いて金庫に入れたちゃったから、少ないぞ。

強盗に備え、大金は置いておかないようにしているんだ。

俺はありったけの札を差し出した。

これで許してもらえるか…?

「…それしかないのかよ!?もっとあるだろう!」


「…い、今はこれしか…」


「もっと出せよコラァ!!」

逆に怒りを買ってしまった。
男は周りを見渡すと、入り口付近で硬直していたキャバ嬢に近づいた。


「金持ってこねえとこの女刺すぞ!」

「キャッ!いやっ」

キャバ嬢が男に捕まってしまった。

なんて事だ!


「ちょ、ちょっと待って下さい。僕、バイトなんで…」

「店長呼んで来いよ!」


「店長…いるかな?―店長~。店長~」

俺は言われるがまま、さり気なく事務所の中に入った。
店長はいないが、磯貝がいるはず。

中で磯貝は寝ていた。

「おい!起きてくれ!店長!」
俺は磯貝を叩き起こす。

「んあ?もう交代か?」

磯貝は寝ぼけている。

「違ぇよ!強盗が来てるんだよ!なんとかしてくれよ。店長!」

「俺店長じゃねーし。お金渡せばいいじゃん」


「レジにあった奴じゃ納得しないんだよ…。しかも女の人が人質に取られてる」


「マジかよ…!…金庫は開けられないしな…。どうするか…」

「とりあえず、店長が行ってきてくれよ」

「俺、店長じゃねぇし!…でも、女の人が捕まってるんだよな?ヤバくね?」

「ああ。美人だ」

< 50 / 167 >

この作品をシェア

pagetop