秘密戦隊とホームレス宇宙人

食らった反動で、磯貝はその場に倒れた。




「きゃっ!やっちゃった」
と、ラリアットをした若い女性は、可愛い声を出した。


「いや、いいんです…。逆に助かりました。どなたか知りませんが……」
と、俺が近付き、女の人の顔をよく見ると…


「桃子さん!?」


「クロザイル!?」

知り合いだった。

それは、いつもより濃い化粧をした桃子さんだった。



「何で…ここに?」

「仕事の帰りに、なんかこのコンビニ寄らなきゃ…いけない気がして、ドライバーに停めてもらったの」

そうか、もうキャバクラの営業が終わった時間か。しかし、桃子さんが来てくれて良かった。


「強烈だったね…。さすが桃子さん」


磯貝は大の字に倒れ、泡をふいていた。


「あ、ゴメンね!つい防衛本能が働いて、手が出ちゃった。この人…ここの店員さんだよね?」


「ああ。でも、いいんだ…。コイツは…俺のベルトを盗もうとした」


「え?」


磯貝の手には、まだベルトが握られていた。桃子さんは磯貝をジロジロと見ながら、俺にこう訊ねる。


「この人が…?なんで?」


「わからない…」


俺は奴の手からベルトを奪い、桃子さんに差し出した。


「アジトに…持って帰ってくれないか?ベルトが狙われているかもしれない」


「う、うん。わかった」


桃子さんは俺のガウベルトを握り締め、そのままアジトへと帰っていった。


俺は磯貝を引きずって事務所の中に移動させると、一人で朝まで店番をした。
やがて、バイト終了の少し前に、磯貝を叩き起こした。


「―痛っ。…なんだ?」

「起きろ。もうバイトも終わりだぞ」


「…え?…なんで起こしてくれなかったんだ?」

「だってお前が、あんなことするから…」


「…何?何が?」

磯貝はとぼけている。


「ベルトだよ。俺の…骨盤ベルト」


「はぁ?何言ってんだ?」


磯貝は、覚えていないのか?
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