秘密戦隊とホームレス宇宙人
「うっ…ううぅ…うぅ…」


内藤の泣き声が響く中、磯貝がゆっくりと俺たちの方に顔を見せた。その目はいつもの磯貝に戻り、瞳から涙が溢れていた。


「…ごめん…。俺、間違ってた。…ごめん」

そう言った磯貝の顔は、洗脳されていたことを解ったかのような、くしゃくしゃの、苦しい表情をしていた。


「……私が忘れ物を取りに来なかったら、そのままコータ先輩を殺すつもりだったの?」


「…ごめんなさい。本当にごめんなさい」

内藤の質問に、磯貝はごめんなさいを繰り返した。


「質問に答えてよ!なんであんな事したの?」

磯貝は土下座をしたまま、顔だけを上げてこう言った。


「…信じてもらえないと思うけど、洗脳されてたんだ…。それで…それで…」


磯貝の言葉に、俺はピンと来たが、内藤は違った。


「何言ってんの?耕ちゃん!頭おかしくなっちゃったの!?」


「内藤…俺はこいつは本当に洗脳されたんだと思う」

「え…?」


俺は磯貝に優しく声をかけた。


「…磯貝。何があった?」


「…一昨日のコンビニ強盗が逃げたとき、追って、そこの空き地で追い詰めたんだ。そうして、犯人に飛び掛ったあと……奴の…………うぅぅぅうあぁぁぁがァ…!」

磯貝は突然途中で頭を押さえ、苦しみだした。


「どうした?磯貝!おい!」


「うがぁぁ……思い出したくない……これ以上…思い出したくない」


「…わかった!磯貝!思い出さなくていい。安静にしてろ」

磯貝は、洗脳の記憶を思い出そうとすると、脳に痛みが走るらしく、普通にしている分には大丈夫そうだった。
俺は大きめの紙にマジックで字を書きながら、内藤にこう言った。


「内藤ちゃん。遅くなると家族も心配するだろ。送ってくよ」

「え…でも…?」


「磯貝のことは俺に任せて!さぁ行こう。忘れ物はない?」

「う…うん」



"従業員急病のため、ただいま閉店中。申し訳ございません"


入り口の真ん中に大きく張り紙を貼り、俺は内藤を送っていった。
< 80 / 167 >

この作品をシェア

pagetop