秘密戦隊とホームレス宇宙人
―キュキュヴォォン

エンジン音と、腰から伝った振動が体に響く。

待てよ…。

このまま走る気か?

走れば俺がどくとでも思ってんのか?

辞めろって…早まるな運ちゃん。

どけるならどいてるよ!


「待ってください!」

俺の叫びも空しく、タクシーは走り出した。

俺を乗せたまま。いや、くっつけたまま。

靴が路面に擦れる。
俺は思わず脚を上げたが、体は落ちない。

完全にくっついて、車と一体化しているんだ。 


超フィットしてる…車と一体化してるんだな。

感動してる場合じゃない。脱出方法を考えなきゃ!

電柱や、壁、バス停の看板が俺の体擦れ擦れを横切っていく。


「あぶねぇって!」


手に持っていたリュックを前に抱える。

この速度…どうやら、運転手は俺がまだくっついていることに気付いてないらしい。

左のミラー見ろよ!俺が映るはずだろ!


―バンバン!

俺は右手で助手席の窓を叩いた。


「止まれって!くっついてるから!」

俺に気付いた運転手は、減速するどころか、なぜか加速した。

そして、蛇行運転を始める。

俺を振り落とす気か!?

体が前後に揺られる。

しかも路肩にぶつかりそうだ!


―ザザザザザ


「いてぇっ!いててて!」

俺の体は道路敷の街路樹にぶつかった。リュックでガードする。

電柱じゃなかったのが救いだが、葉っぱが口に入った。

「ペッ!」


―わかったぞ。

ベルトを外せばいいんだ!
こんな簡単な答えに、どうして今まで気付かなかったんだろう。

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