秘密戦隊とホームレス宇宙人
「はい…。向こうから来るパトカーにすれ違ったんです。対向車のパトカーの運転席に乗っていたのは、警官じゃなかったんです」


「警官じゃないのが運転してたの?」
と、桃子さんが訊き、詩音ちゃんは頷く。

「誰だったの?」
と、俺は訊いた。


「私の目には、コンビニ強盗の犯人に見えました」


「「ええっ!?」」


「私は前に乗っていた警官に言ったんです。今のは…?って。そうしたら、何かあった?って…」

「警官は見てなかった?」


「見てなかったのか、見ててもスルーしたのかはわかりません」


「…どういうこと?」
と、桃子さんが厳しい顔をして言った。


「捕まったはずの男が…パトカーを運転して逆走していたって事ですか?」
と、涼平が言った言葉に、詩音ちゃんは頷く。


「その後は?警察に行った後は?」
と、俺が訊ねる。


「普通に事情を聞かれて、普通に説明して、帰されたんです。…でも」


「でも?」


「ニュースで流れた犯人の顔は、あの犯人じゃなかった…!」


その言葉に驚いたが、同時に確信した。犯人のパープルは、捕まっていない!


「佐々木さんはニュース見てないんですか?」


「俺は…見てないんだ」


「ニュースの顔は別人だった…。ニュースで流れた防犯カメラの映像には、犯人の顔は映ってなかった。佐々木さんがフルフェイスを脱がしたけど、ビデオには足までしか映ってなくて…。私は、警察が情報を操作しているとしか思えなくて……」



「じゃあ、犯人は留置所に行くどころか…捕まってなくて、別の人間が犯人になってるって事ですか?」
と、涼平が言った。


「私には…そうとしか思えないんです。もう何も信じられない」

詩音ちゃんはそう言って頭を抱えて下を向いてしまった。


「それは、誰にも言ってないの?」

「はい。ここで初めて言いました。警察にも掛け合ってないんです。警察も…信じられないから」
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