白薔薇と黒薔薇
「白音様っ!良かったです!なかなかお戻りにならないので心配しましたよ。」
先ほどの黒夜の部屋の前で、少し涙目になる雪子。
大きな黒い瞳からポロリと涙がこぼれている。
「ごめんなさい、噴水の場所で黒夜さんにあって……
少し話をしていたものだから、ね?
心配しなくても大丈夫よ。」
優しく雪子の手を握った。
「姫様、皇子は見つかりましたか、良かったですよ。」
雪子の隣には、黒夢の護衛であるイザベの姿。
パープルの瞳はまっすぐ黒夢を見ている。
「そんなに探してくれていたのか。なんだが申し訳ないな………」
薄っすら苦笑いを浮かべる黒夜。
「そんな事ないですわ、兄様……
ごめんなさい………私がはやく白音を紹介したかったのよ。
だって……久々の来客だもの、いつもマハブリード王が来られるだけで……。」
下を向く黒夢。
来客が来ない事は、白音と同じなのだ。
「私だって急かしてしまったもの……お互い会いたかったのよ。
………お部屋に入ってもいいかしら?」
2人を見つめる白音、
実際、白音の頭の中は、黒夜の部屋がどうなっているのかでいっぱいになっていた。
「いいよ、何にもない部屋だけどどうぞ。そこで話をしようか……」
そう言って、雪子とイザベには隣の部屋で待機するようにいい、
3人で黒夜の部屋へと入った。