白薔薇と黒薔薇


「姫………」

「ナヤ、ナギ、ごめんなさい。巻き込んでしまって………」



隣に立つ二人に優しく声をかけた。


「魔力もほとんど残っていない。」


だけど、私にだって大好きな人がいるものね。


「最後にわがまま言わせて?

貴方達は逃げて?お願い。」


「姫っ!?」


慌て、動揺する表情を無視して、転送魔法を使った。



ごめんなさい、ナヤ、ナギ。

わがままを許して

情けない私でごめんなさい。




宮廷の片隅に壁にもたれる男が一人。
そこへボロボロの服を来た少女が駆け寄った。


「姫………」


はぁはぁと息を切らし精一杯の声で彼女の事を呼ぶ。


「イザベ…………私のわがまま許して?」



息を切らしている傷だらけのイザベを精一杯抱きしめた。

身体はボロボロだけど何故か心地よい、


宮廷は無残に崩壊していて、足音も聞こえる。

邪悪な闇に包まれた人々。


私は救えなかった、



結局私は何も出来なかった。




なのに、愛する者といたいなんてわがまますぎる私を許して………


「姫……黒夢は十分頑張りましたよ、」


顔を上げると貴方の優しい笑顔。
優しく私を抱きしめる。

怖い顔って言われているけれど、私はずっと、私を守ってくれていた貴方が好きだった。

重なる唇

暖かい気持ち。


何故こんな事を思ってしまうのだろう。









幸せ、と。









凄まじいパンっ!という音が宮廷の片隅から聞こえた。

その場は静かになった。
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