白薔薇と黒薔薇
無くしたものと愛するもの
ーーーーーー
ーーー
ー
星空の中、
願ってしまう。
黒夢、
黒夜さん、
黒蘭さん、
どうか無事でいてーーー
お母様、お父様、
兄様………どうか二人を守って!
溢れる涙が止まらない
嫌な予感がするから、
「ぁっ!ここ………」
すーっと床へ着地した。
そこは白音がよく使う本の部屋、
ここであの本を読んだ。
移動中の嫌な予感が当たってしまった、
もうすでに、邪悪な闇に染まっている宮廷。
窓から見える庭園は焼け野原となり、宮廷のあちこちが、崩れていた。
不思議とこの部屋はあまり傷がなかった。
「結界が破られてるわ………」
☆人々の憎悪は、闇は、どんな光も消し去ってしまう。
そして人の心さえも
黒く染めてしまうーーー。☆
また、聞いた声。
でも今はそんな事を気にしている場合ではない。
「白音様、テレパシーが上手く届きません……」
小さく弱々しく言う。
おそらく邪悪な闇のせいだろう。
いつも明るく光の照らされる白薔薇の宮廷は、今はもう面影すら残っていない。
光は闇に飲み込まれている。
「雪子っ!!!!!姫様っ!」
ガタんっ!と勢いよくドアが開いた。
はっ、と構えるが、
すぐに誰だかはわかった。
「カシベっ………カシベルっ!ぁあ、ふっふわぁぁぁあんっ!!」
真っ黒な瞳から、大粒の涙
カシベルにがしっとしがみつく。
カシベルも傷だらけで、左手はもう使えない、垂れ下がりそこから血が流れ、水たまりを作る。
「白百合様は………」
「母様の居場所なら知ってるわ。」
はぁはぁ息を切らしたカシベル。
泣きじゃくる雪子をしっかり抱きしめている。
「私一人なら転送魔法が使えます。
何も言わないで?
カシベル、雪子を必ず守って頂戴。」
優しい笑顔で2人を見つめた。
白薔薇の騎士として支えてくれてありがとう。
2人とも生き残ってーーー
今度は白音の方を見て泣き出す雪子。
したを向き、必死に涙を堪えるカシベル
「ご無事を…………」
その言葉を最後に、
白音はパチリと指を鳴らした。