白薔薇と黒薔薇



パリんっ!

薄い幕は剥がされ、人々がこちらに鉄の塊を向けた。


もう駄目だと思った。

ここで死ぬのだと、悟った。
ギュっと目をつぶる。



白薔薇の最後の私が死んだらどうなるのだろうか?
世界に影響はないの?

黒薔薇は?

今どうなっているの?



頭に浮かんだハテナ、もうそれすらわからない。


最後に貴方に会いたかったーーー。



どうして思い出してしまうのだろう。
本のわずかしか一緒にいなかった貴方の事を、
笑顔が、優しい笑顔が頭の中で映る、

どうして好きになったのだろう

貴方に、会いたいーーーー。






激しい音が地下に響いた。
何かを貫く鉄の塊。








痛みがないーーーーー。





そっと目を開けた。目にうつるのは白銀の髪。
血しぶきが白い服を汚していく。

真っ黒な瞳は優しげに白音を見つめた





「な、………んで…………」


私はまた、大切な人を失うの?
救うどころか、救われて………



白音の前で彼は倒れた。


「カシベル、なんで!?どうして逃げなかったの!?
どうして私のところにきたの!?」

泣きじゃくる私に小さな声で彼はつぶやいた。
周りの人々はまるで時間が止まったように動かなかった。



「雪子……逃げまし、た……でも、お、れは、白薔薇の……騎士だか、ら。

最後まで貴方を………守るのが、使命です。

貴方が生きていれば………
きっと世界を救えると、そんな声が聞こえてきた、んです。

だから、貴方には生きて、欲しい、」


「そんな………私には………」


またあの声が聞こえてくる。


☆よく見てごらんーーー

邪悪に染まり、己が何者かもわからなくなってしまった民を、

どうしてこうなったかなんて彼らにはわからないの。
ただ、幸せを願っただけなのにーーー。

誰も彼らを止められないの。
彼らの悲しい暴走は。

でも、貴方には止められる可能性が残っているのよ。

貴方には使命があるでしょう?
白薔薇の最後の砦よ、どうか世界を染めてしまう邪悪な心を消しさり、

彼らを助けてあげてーーー。☆








「いや、俺もそう思う。
白音、生き延びろ!なんとしてでも、亡くしてしまった命の分まで。」



白音を強く抱きしめたのは、大好きな父純一。
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