白薔薇と黒薔薇
ぁあ、どうして父様まで、そう思ってくれるの?

何もできないこの私を庇ってでも
名も知らぬ声の主もーーー。


周りの兵も彼女に微笑みかけている。
貴方だけでも生きて欲しい、と。


「俺は魔力もたくさんあるとはいえない………
だけど、これならーーー。」


光出した地面。
止まった時間が動いたように、こちらに襲いかかる人々。

それを食い止める白薔薇の騎士と兵

一体何の為に殺しあっているのかなんて今更わからない状態。


「俺は、白百合を救えなかった。優白も………

だからこそ、白音。
お前だけでもせめて救いたい。

お前も、大事な人を失っただろう?こんな事行ってはきっとならないんだ!」


「いやよっ!私は白薔薇の白音ですっ!父様!!彼らを置いて自分だけ逃げるなんて、いやよっ!離してっ!…………

ねぇ………父、様……」


ギュと抱きしめる父から泣いている声がする。
確かに彼女がこの場に居続ける事は間違っていない。

白薔薇の最後の砦として、兵とともにこの場を乗り越えよとーーー。

けれど、嫌でもわかる。
この人数には到底及ばない、と。


黒薔薇と違い、戦闘経験だってほとんどない兵や騎士。
唯一絶対の結界も壊されてしまったのだ。


どの道ここにいては、殺されてしまう。



これは親としての俺の勝手な思いだけではない。
白音はこんなところで死んではいけないんだ。

この宮廷を脱出したって、どうにかなるとは思ってないけれど

それでも、

救いたい。

無くしてしまったものの分まで、

愛している大切な娘をーーー。




「生きろ、白音。
生きて、彼らを救う方法を考えろ!

愛してる。」


最後に見た父の顔は、
暖かいいつもと同じ優しい笑顔。
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