白薔薇と黒薔薇
それにしては、この本はとても不思議だ。
だんだんと未来に向けて見え始める内容、持ってきたわけでもないのに何故か胸元に入っていた。
まるで瞬間移動
邪悪な闇から逃げて、
貴方を探して、
意味さえわからなくなっていた。
でも、この魔法ならーーーー。
私の生きなければならない意味にも繋がるのではないかもしれない。
白き力の主である私に。
兄を亡くした。
友と、友の母を亡くした。
母を父を、そして大切な仲間も………
絶望の中でさえ、生きなければと思う気持ちは、きっと貴方も同じでしょうか?
黒き力の主。
貴方も同じ生き残り。
出会ったときから知らないうちに一目惚れしていた。
どうしようもない気持ちが溢れそうになる。
仲間も家族もいないけれど、貴方がいると知っているの。
だから、生きるの。
霧が深い場所を走った。
どんどん濃い霧になっていく。
それでも走り続けると、
やがて光が見えてきた。
森の中にある湖
美しい銀色の湖
夜のようにくらいのに、星の灯りが暖かい。
ここだけ、邪悪な闇に染まっていなかった。
ガサッ!
少し離れたところから木をはらう音が聞こえた。
殺しにきたのか、嫌違う。
覚えてる。
私と同じ瞳の色。
冷たい中にある優しい笑顔。
「黒夜さん…………」
言いたい事が沢山あるのに言葉に出てこない。
白音の瞳からは大粒の涙がこぼれた。
ただ、また会えて嬉しい。
黒夜の服も、ボロボロで面影すら残ってはいなかった。