白薔薇と黒薔薇

けれど彼の表情は柔らかかった。


「白音さん………」


一歩一歩と、近づく二人。
顔を向かい合わせて少し照れ合う。


お互いが寄り添うように抱きしめあった。まるで何か失ったものを埋めようとするようにーーーー。



「俺は………沢山失ってしまった……俺の所為で。」
「私も、私の為に多くの命を亡くしてしまったわ。」


お互い同じように大切な人を失った。
抱きしめながら黒夜は白音の顔をまっすぐ見つめた。



「俺は貴方が好きです。貴方の太陽のように優しい笑顔が………白音さん。
俺は貴方を守る為にここにやってきた。
大切な人が大切な人を守れと、言ってくれたからーーー。

俺は使命なんか知らない。
邪悪な闇に染まってしまった彼らのことさえも………

ただ、今の俺には貴方を守る事が生きる意味です。

愛する貴方が世界を救いたいと願うなら俺も同じ気持ちになる。
共に世界を救おう………」


照れたような顔
きっと始めてこんな事を言ったのだろう

ーー告白ーー

白音の顔も真っ赤になっていた。
言われるのなんて始めてだからーーー



「私もね、変だね、こんな時にこんな事言い合うなんて………

私達は命を狙われて、
家族は殺されて、邪悪な闇が世界を染めようとしているのに。


でも、こんな時だからかな………


私も貴方が好き、黒夜さん。
一目惚れだったの。

一緒に考えよう、もう私達しかいないけれど、
少しでも、

それが私達の、神帝のすべきことだから世界の幸せを願うのが使命だもの。」


お互いの唇が優しく重なり合った。

太陽のような笑顔の白音
月のように包み込む黒夜

二人だけの時間が少しながれた。










☆黒き器と白き器よ。☆


月明かりが銀色の湖に差し込むのと同時に暖かい空気に包まれた。
ふと声がして二人とも辺りを見回したが周りには誰もいない。


「貴方は誰?」


少し顔が赤い白音。
先ほどまでの事を思い出してしまっていた。
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