白薔薇と黒薔薇
「とても嬉しそうですな白音様。」
後ろから、杖をつく音と同時に聞こえてきた老人の声。
「アナリバ老師………えぇ少しね、嬉しい事があったのよ。」
先ほどのやり取りを思い出して、嬉しそうに微笑んだ。
しかし、妙な違和感を感じて、
空を見上げる。
いつものように、日差しが照りつけているが、何故だか少し暗くなった気がする。
アナリバもそれに気がついたようで、瞳が不安気だった。
白薔薇の宮廷は夜でも月明かりがとても明るい。
白い力が強いからだそうで、
「なにかあったのかしら………」
少し寒気がして、腕を手で押さえてうずくまった。
先ほどまでの手紙で嬉しそうな顔も、空を見てから不安そうな顔へと変わった。