白薔薇と黒薔薇
黒薔薇の奴らだ。
俺は憎い、父を殺した黒薔薇も、
俺達がこんなに苦しんでいる中、お気楽に贅沢に生きている白薔薇の奴らだって、
だから俺は…………あいつらをぶっ潰してやりたい。」
舞台に立つ少年の瞳は冷たい光に当てられて、暗く光る。
「俺も息子を殺された。」
「私のお父さんもよ。」
「私の娘は病気で死んだわ、ただの奴隷だからといって適当に埋められた。」
「神帝という立場で俺達を見下しているんだ。」
「白薔薇が憎い。」
「黒薔薇が憎い。」
「あいつらさえいなければ、俺達にだって………」
「潰してやりたい。」
広場の人々はそれぞれの思いをぶつけ合う。
それぞれの心に刻まれた辛い思い。
「あいつらに魔法なんかじゃかなわない、だから………」
舞台に立つ少年は、手に鉄の塊を持ち、高く掲げた。
広場の人々はそれをじっと見つめる。
パンっ!
空高く撃ち込まれたのは拳銃の玉。
そう、魔法が生活の一部のこの世界にはなかったもの。
「これは人を殺す道具だ。
傷つける道具、こんなもの良くないと思っている、
だけど、あいつら貴族は俺達にこの鉄の塊に撃ち込まれる傷よりも深い傷を与えた。
戦おう、
俺達には魔法がなくたって、考える頭がある。
それを行える人だって力だってあるんだ。
俺達に魔法なんかいらない。
不幸しか与えない魔法なんて必要ない。」