白薔薇と黒薔薇

そんな白音に暖かい部暑いコートをかける雪子。

いつのまにか、雪子の服装は薄手のメイド服から、暖かそうな白いふかふかのメイド服に変わっていた。



「ようこそ、黒薔薇の宮廷へ。

母様が、部屋で貴方を待っているわ、今回のこの異例のことを
白音がわざわざ来てくれたことを、
母様はとても喜んでいたの。誰もあまり来ないから………」


そう言って優しく微笑んだ。

その後ろには真っ黒なスーツに身を包み、表情を全く変えないイザベの姿。




「私も一度来て見たかったから………」



黒夢の真っ黒に真っ赤な瞳が悲しげに光ったのを見て、言葉がつまる。


光が全く届かないこの宮廷は、魔法で明るくしているものの、
その光は何処か温かみがない。



「では案内いたします。」

後ろに立っていたイザベが一歩前に立ち、一礼した。






冷たい光が注ぐ長い廊下、
おそらく白薔薇の宮廷と同じ廊下の作りのはずが、まるで違う。


すーっと大きなドアの前に立つ。


白音は一度も黒薔薇の長をみたことがない。そもそも白薔薇の宮廷から出たことがないのだが………

長と聞くと少し緊張する。
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