ふたりのガーディアン
「待てよ!」


足を引き摺りながら、慌ててその男の後を追う。


だけど、もう姿がなかった。


非常階段から逃げたのか?


逃げ足の速いヤツ!


一体誰なんだ?


それより…。


竹内が大変だ。


「竹内、大丈夫?」


廊下の薄暗い照明を頼りに竹内に近づくと、肩があらわになった竹内が床にしゃがみこんでいた。


さらにそばに行くと、竹内のブラウスの下から下着が見えてしまった。


俺は頬が熱くなるのを感じて、視線をそこから逸らした。


竹内は、呆然と床に視線を落としている。


俺は竹内に手を伸ばして、そしてそっと抱きしめた。


「竹内。もう大丈夫だから」


竹内は俺の腕の中で小刻みに震えている。


「渋谷くっ…うっ」


小さな身体をさらに強く抱きしめると、ひんやり冷たい肩が俺の頬に触れた。


「怖かっただろ?」


そう言うと竹内は、俺の背中に腕を回して泣きじゃくった。


可哀想に。


こんな暗い教室で、いきなり知らないヤツにあんなこと…。


俺達は、しばらくその場で抱きしめあった。
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