ふたりのガーディアン
「妊娠は嘘ですね…」


私は、ぽつり呟いた。


「は?」


「そんなの嘘だわ」


「どういう意味よ」


「だって、言ってることが矛盾してます。

薫さんは去年の夏、瀬名君のために姿を消したと言いましたよね?

瀬名君の将来を考えて、自分で責任を取ったと…。

でも、今のあなたはその妊娠を盾にして、瀬名君を縛り付けてる。

一度は瀬名君のことを考えて身を引いたあなたが、どうして今度は瀬名君を手放そうとしないんですか?

それは簡単です。

妊娠が嘘だからです」


私の言葉に、瀬名君が目を見開いている。


薫さんの呼吸が荒くなって、肩が上下してる。


動揺しているんだ…。


「あなたに何がわかるの?」


「え…?」


「あなたに私の苦しみがわかるの?」


どういう…意味?


「あなたみたいに愛されて、のほほんと暮らして来たような子に、私の何がわかるのよ。

私はあなたみたいなタイプが一番嫌いなの。さっさと帰りなさいよ!」


のほほんって何?


薫さんはどうだったの?


私と何が違うって言うの?
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