ふたりのガーディアン
私は屋上を飛び出し、3年の校舎へと走った。


階段をかけ上がると、5組の教室を覗いた。


必死に蒼甫君の姿を探す。


いない…。


どこにいるんだろう。


食堂かな?


売店かな?


「優月ちゃん」


「あっ、さっちゃん」


「どうしたの?」


「ねぇ、さっちゃん。

蒼甫君がどこ行ったか知らないかな?」


「えっ?蒼甫君?

蒼甫君なら、今日早退したよ」


「え…」


「仕事があるらしくて、午前の授業が終わったらすぐ帰ったの」


そ…うなんだ。


「どうしたの?なんか優月ちゃん、目が真っ赤だよ」


「…うん。ちょっと…」


「大丈夫?」


「うん…」


その時、予鈴のチャイムが鳴った。


「さっちゃん、ありがとう。また会いに来るね」


「う、うん。またね」


私はとぼとぼと階段を下りた。


蒼甫君…。


もう帰っちゃったんだ…。


ひと目だけでいいから、遠くからでもいいから見たかったのに…。


どうしても、どうしても会いたい…。


「あ…」


そうだ。


そうだよ。


今日は蒼甫君の誕生日じゃないの。


あの日の約束…。


蒼甫君は、きっともう覚えてないよね…。


でも、でもそれでも…。
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