シュシュ
「薫子」

無表情のまま私の名を呼んだ龍之介。


「…なんですか?」

怯えた表情でそう答える。


「で?お前の気持ちはどうなんだ?」

…まだ、飛鳥さんに言っていないのに、こんなところで、

しかも、龍之介の前で言いたくはない。


…そこで私は考えた。

龍之介に、耳打ちする事を・・・

その行為に、飛鳥さんは少し困っているよう。

きっと、この場で、私の気持ちが聞けると思ったから。


「・・・ふ~ん。そうなのか。それなら仕方がないな」

そう言って苦笑いした龍之介。


「誰にも言わないでくださいね、お兄ちゃん」

私は龍之介に念を押す。・・・が。


「母さんには言わないとなぁ…父さんにはまだ言わない。

西条さん、また近いうちお会いしましょう。

ちゃんと自分の気持ち言えよ、薫子」

そう言ってニヤッと笑った龍之介。

私はそんな龍之介の肩を軽く叩いた。



・・・そして、部屋には二人きり。

・・・凄く、ものすご~く、飛鳥さんの視線が痛い。
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