シュシュ
準備ができ、お母様の前まで来ると、笑顔で言った。

「…悩み事なんてありません」


そう言った私の顔を見て、お母様は、微笑んだ。

「フフ、貴女は小さい時から何も変わらないわねぇ。

ウソをつくとき、手がソワソワしてるの、気が付いていて?」


…ハッとした。

目線を自分の手に向けると、確かにソワソワ、モジモジ、

ずっと動かしている。


「・・・恋人と、上手くいってないんでしょう?」

「・・・そうじゃないです」


「…じゃあ、貴女のお父様や、おじい様の職業が

引っかかってるんじゃなくて?」

「・・・!」


目を見開いた私に対し、当たったと言う満足感一杯の

顔をしたお母様。


「ゴッホン…時間が押してるんですが?」

咳ばらいをした龍之介。

「あら、そうだったわねぇ…この話は、これが済んでからね」

そう言ったお母様は、席を立ち、玄関に向かった。

その後を龍之介が、最後に私が後を追い、

待ち合わせ場所に向かった。
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