シュシュ
「どうしたの、そんなに難しい顔をして?」

受付の椅子に座りながら、玲子さんが問いかけてきた。


「…エ?!・・・なんでもありませんよ」


私はサッと紙をしまい、笑顔を見せた。

社長から誘いがあったなんて言ったら、

玲子さんはきっと発狂しそうなので黙っていよう。


「私がいない間、何もなかった?」

「も、もちろんです・・・お客様の対応も、無事に済みました」


私の言葉にホッと溜息をついて、玲子さんは微笑んだ。


「・・・ところで」

「・・・はい?」

仕事をしながら玲子さんは言った。

…わ、忘れてた。私は一気に頭の中がパニックになる。

その、忘れていた事とは・・・


「今晩、何が食べたい?薫子ちゃんのリクエストなら、

何でも聞いちゃうわよ。この辺には詳しいから」

そう言って満面の笑みを見せた玲子さん。


玲子さんが食事に連れて行ってくれる事を忘れるなんて。

・・・先輩のせっかくの誘いを断るわけにはいかない。

社長の方を断ればいいんだ。

・・・そうよ、社長が私を誘うこと自体、

何かの気まぐれか、もしくは・・・

気に入らないから辞めろなんて用件かもしれない。
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