シュシュ
そしてすぐに私はある人に電話をかけた。

『どうした、薫子?』


普段滅多に電話をかける事はない。

だから当然ながら相手は驚いている。


「…迎えに来て、お兄ちゃん」

…そう。電話の相手は私の兄龍之介。


『…まだ仕事中だ。安藤をそっちに行かせるから』

「・・・うん」

安藤とは、龍之介の秘書兼幼なじみ。

安藤 東吾(あんどうとうご)私を可愛がってくれる、

第二の兄のような存在。

・・・

待つ事、約10分。東吾がマンションに来た。

「どうしたの、薫子?慌てて龍之介に電話してきたみたいだけど?」


私を見るなり、東吾は心配そうな顔をして問いかける。

私は必死に笑顔を作り、東吾に言った。

「どうしても、実家に帰りたくて・・・

家に帰るには、車が必要だし、でも私は持ってないし」


「・・・何かあったんだね?」

私を助手席に誘導し、乗せると、車を出した。
< 153 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop