シュシュ
でも、石坂さんの事を考えると、

申し訳なくて、帰るに帰れない。

…私は溜息を一つすると、

意を決して、社長の元に歩き出していた。


「・・・遅くなって申し訳ありません」

とりあえず、待ち合わせに遅れたことを謝罪する。

私の言葉に、夜景から目線を移し、

私を見上げた社長の顔は・・・う。


…明らかに怒っている。


「遅れた理由は?」

怒った表情のまま、そう聞かれ、困惑する。



「・・・く、来る気にならなかったからです」

ウソをついても仕方がないので、

もちろん、クビを覚悟でそう言うと俯いた。



「なぜ来る気にならなかった?」

「…会社を辞めろと言われるんじゃないかと思って」



「…なぜそんな事を思った?」

「朝、私に対して、とっても不機嫌だったからです」


…しばしの沈黙。

この沈黙は、何より拷問だ。


「私がなぜ今怒ってるのかわかるか?」

「…遅れたからですよね」


「そうだ…なぜ石坂に連絡しなかった?

ここに来るまでに事故にでもあったんじゃないかと

心配したんだぞ」
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