シュシュ
社長の言葉にちょっと驚き、目を見開く。

すると、社長の険しかった顔つきは、

優しい顔に変わっていた。


「・・・何事もなかったんならそれでいい。

ちゃんと来てくれて嬉しいよ・・・さぁ、

そこに座って」


社長の向かいの椅子に促され、

静かに腰かけた。


「…もう、怒ってないんですか?」

「もう、怒ってなどいない。

今度から、遅れる時はここに連絡しなさい」


そう言って指しだされたのは、

社長の名刺…携帯は、手書きだった。


「・・・これ」

「その番号は、プライベート用だからな」

「・・・」

黙り込む私。

社長は何を思って、私をここに誘ったのか?

なぜ、こんな大事な番号を私に教えるのか?

その理由が全く分からなくて、何も言えない。

その時だった。

私の気持ちはお構いなしに、コース料理が運ばれてきた。

呆然とその料理を見つめる。
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