シュシュ
…石坂に、薫子の事を話して以来、

俺の態度表情一つで、何を考えているのか

分かるようになってしまい、正直困り者だ。


『仕事の時は、何を考えてるのか分かりかねますが、

星野さんとのことを考えてる時の社長の態度は、

分かるようになってきました』


移動中の車の中で、石坂が言っていた。

分かってくれなくていいんだが。

そう言ったら、

『星野さんに関する事だけは、ポーカーフェイスが

崩れるんですよ、知ってました?』

そう言ってクスッと笑われた。


…石坂以外の者に、薫子とのことがバレない様に、

気をつけなければ。

そう思わずにいられなかった。


気を取り直した俺は、また仕事を始める。

仕事に集中している時は、唯一、薫子の事を考えないから。

午後は、取引先との会合で、社に帰ったのは、午後9時。

・・・薫子との約束の時間だった。


俺は窓際に腰を下ろし、薫子の携帯を鳴らす。

…間もなくして、薫子が電話に出た。

「・・・飛鳥だが、今大丈夫か?」


少し息切れ気味に、

『だ、大丈夫です・・・』

と言う薫子。
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