シュシュ
そんな私の肩を、玲子さんは優しく叩いた。

「まぁ、まぁ、そんな顔しないの・・・

薫子ちゃんはこの会社の受付嬢、会社の顔よ?

笑顔を作りなさい」


「・・・でも」


「入社初日のお祝いに、先輩のこの私が

帰りに美味しい食事に連れて行ってあげるから」


その言葉に、思わず笑顔になる。

美味しい食事・・・美味しいモノ大好き。


たった数秒で満面の笑みになった私を見て、

玲子さんはクスクスと笑った。


「本当、薫子ちゃんは可愛いわね」

「・・・へへ」


…いつの間にか、社長の事は、

頭から離れていた。

だって、覚えなきゃいけない事がたくさんあり過ぎて、

へとへとになりながら・・・でも、

笑顔は絶対に絶やすことなく、仕事をこなす。

…昼食へ行く頃には、その笑顔も限界に来ていた。



「先に元気補充しておいで、薫子ちゃん」

「そんな、玲子さんが先に休憩してきてください」

先輩を差し置いて、休憩に入るなんて、そんなことできない。


「私はまだお腹すいてないし・・・

薫子ちゃん、お腹が空きましたって顔に書いてあるわよ」
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