シュシュ
突然受話器越しに聞こえた薫子の悲鳴。

耳がキーンとなったが、その悲鳴の意味の方が気になって、

急いで薫子に声をかけた。


「薫子どうした?!」

…しかし、無情にも、通話が途切れる音だけが返ってきた。

ツーツーツー・・・

一体何があったんだ?

心配になり、家に帰るどころじゃなくなった。

俺は急いで駐車場まで降りると、

車をとばして、薫子の住むマンションに向かっていた。


その間にも、何度も薫子の携帯を鳴らしてみるものの、

全く応答がなく、増々嫌な事ばかりが浮かんでは消えて行く。

マンションに着き、マンションの郵便受けで、星野を探す。

・・・薫子の部屋は6階。

エレベーターなんてものに乗ってる暇はないと思った。

俺は階段を駆け上がり、薫子の部屋へと走る。



「薫子!薫子!飛鳥だ、開けろ!」

何度も名前を呼びながら、部屋のドアを強く叩く。

今の時間、午後10過ぎ。

隣人たちが、何事かと慌てて外に出てきて、

こちらをうかがっている。でも今は、そんなことはどうでもいい。


今はとにかく、薫子の顔が見たい。

もう一度薫子の名を叫んだ。

「薫子!」

すると、勢いよく、ドアが開き、泣き顔の薫子が

俺に飛びついてきた。
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