シュシュ
「そうだったのか?それは初耳だな」

そう言ってフッと笑う。


「そりゃあそうですよ。

妻からは、絶対に社長には言わないでくれって

釘をさされてるんですから・・・秘密ですよ」

そう言った石坂は、人差し指を唇に当てた。


…本当に、石坂夫婦は、仲がいい。

前に何度か会った事はあるが、石坂をしっかり支え、

子供の教育にも熱心な、良妻賢母な、素敵な奥さんだ。


「今日はもう上がっていい。

後は書類のチェックだけだから、俺だけで十分だ」


「・・・ですが」


「素敵な奥さんと、可愛い子供に、しっかり休日は

サービスしてやれよ」


「・・・はい、ありがとうございます。

じゃあ、お言葉に甘えて…ぁ、社長」


「・・・どうした?」


「僕の事より、社長も…星野さんに連絡した方がいいですよ。

彼女、きっと待ってますから」

そう言って微笑んだ石坂は、一礼すると、

社長室を出ていった。
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