シュシュ
・・・6階に着き、薫子の玄関のチャイムを鳴らす。

…しかし、薫子は出ない。

電気を点けたまま、眠ってしまったのか?


…もう一度、もう一度だけチャイムを鳴らそう。

それで薫子が出なかったら、諦めて帰る事にしよう。


・・・ピンポーン。


…ガチャ。


静かに玄関が開いた。・・・が。

目の前に現れたのは、薫子じゃない、別の女性だった。


「・・・西条社長」

女性の口から俺の名を呼ぶ声。

…どうやら彼女は、うちの会社の社員らしい・・・あ。

思い出した。

名前は知らないが、薫子と一緒に昼食をとってる女性だと気付く。


「・・・こんばんは」

「こ、こんばんは…ぁ、えっと、薫子、ですよね?」

「・・・」

俺は黙ったまま頷いた。


「ちょっとだけ、待っててもらえますか?」

そう言った女は、俺の返事も聞かず、オレを玄関に残したまま、

部屋の中に消えて行った。

…それから数分後。

帰り支度を整えた女は慌てて外に出ていく。
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