シュシュ
「え、ちょっと?!」

俺の静止も聞かずに、女はこう言った。


「薫子は中にいます。私はもう帰りますので、

ごゆっくり・・・あ。

この事は他言しませんから、安心してください」

そう言って満足そうな顔をした女は、外に出ていった。

…一体なんなんだ?

…ところで薫子は何してる?


俺が来たにもかかわらず、薫子は姿を見せない。

「…お邪魔します」


そう小さく呟いた俺は、部屋の中へと入っていく。

…こういう事だったのか。

なぜ、薫子が俺を出迎えなかったのか・・・その意味を理解した。

・・・思わずそれを見て、フッと笑みがこぼれる。


・・・薫子は、ソファーに寝転がり、

気持ちよさそうに眠っていた。

テーブルの上には、おつまみとチューハイの缶。

さっきの友人と、飲んで、そのまま眠ってしまったようだ。


「・・・薫子、ここで眠ったら風邪をひく」

「・・・う、ん」


「ベッドで眠ろう」

「・・・う~ん」

寝言のような返事が返ってくるだけ。
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