渇望男の潤いペット
崖の先まで歩いている彼女に、海からの強い風が吹き付ける

俺は少し心配になった

彼女が飛ばされるんじゃないか…

彼女が飛び込むんじゃないか…

でも彼女の顔があまりにも儚いから、しばらく目を奪われた



「私の母は自分が人魚の末裔だと信じていました。」

「え!?」

俺は突然の話に動揺してしまった。

人魚の末裔?

「このままあの人といれば、やがて私達は殺されると思い、私を連れて海に還ろうとしたんです。」

風が彼女の髪を何度も強くすいていた

「でもここまで来て、母は躊躇しました…」

「な、何で?」

俺の疑問を聞いて彼女は振り返る

その表情は痛々しく笑っていた

「母は最期にこう言ったんです『貴方はまだ稚魚だから、泳げなかったらどうしよう』って…」

く、狂ってる……

俺は思わず生唾を飲み込んだ

正直恐ろしくなってしまった

「でもすぐに私はあの人の追っ手に捕まり、母はそのまま飛び降りてしまいました。私を置いて…」

また悲しそうな顔をして海を眺めた。

「それが強く私のトラウマに残り、私はこんな体に…」

自分の足を乾かせないと思い込むようになった…
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