渇望男の潤いペット
人魚病―

彼女の精神科医がつけた病名

「自分でもおかしいって思ってるんです…そんな訳無いって…だけど、思い出すのは母の最期…」

彼女の精一杯なんだろう…

伝えるのに一生懸命なんだ。俺に…

「いいんだよ、そのままで」

俺の台詞に彼女が振り返る

あの日、君は死のうとしていた。闇夜に一人、ずぶ濡れでここを目指して歩いていた

それをサーフィン帰りの俺が見つけた

彼女を連れて帰った

頼る人もなく、自分の未来に途方に暮れていた

だから、お前の人生はもう俺の物なんだ

お前の命もその存在全てが俺の物なんだ


「還ろう、足が乾くよ…」

俺が手を伸ばすと、彼女は泣きながらその手にしがみついてきた

「私、今が1番人生で幸せです…」

―俺も―

そう言いたかったけど、言葉を飲み込んで彼女の肩を抱いた
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